ikanika MUSIC SEASONING vol.7 Web Repot2
それでは後半戦です。
Arvo Partがちょっと重たかったので、
現世に立ち返りお正月ソングを聴きましょう。
お正月の歌はクリスマスソング以上に聴ける日数が限られています。
ぎりぎり成人の日までだろうということもありますし
(編集注:当イベントは2015年の成人の日に開催)。
Happy New Yearの曲ってあまり存在していないと思うんですが、
レコードラックを探して「やっぱりこれだろう」ということでユーミンです。
これは素晴らしいんです。歌詞がとにかくもう最高です。
聴いてみましょう。
松任谷由実/A Happy New Year
(拍手)
ありがとうございます。1981年の『昨晩お会いしましょう』という
アルバムに収録されています。
声が若いですよね。クリスマスにあれだけラブソングを歌って、
さらにお正月も愛しちゃう。忙しいですね(笑)。
皆さんは他にNew Year Songで思いつくものはありますか。
一応持ってきたのはU2の「New Year's Day」です。
でも、この場にそぐわないから止めようかとも思うんですが……。
観衆:聴きたい!
ちょっと聴いてみます? すごいんですよ、これは。
U2を一躍有名にした大ヒット曲です。
この『War』というアルバムの前に『Boy』というアルバムが出ていて、
ジャケットには同じ少年が写っているんです。
『Boy』のときは本当に可愛らしい
赤ちゃんみたいな顔で写っているのに、
その数年後にこうなっちゃう、衝撃的ですね。
83年の作品。
今まで聴いてきたものと音が違いますよ。
U2/New Year's Day
このPV覚えています?
雪の中でコート着て、ギターを弾く。
そんなコート着てたらギター弾けないだろってやつ。
それと同じことをやったのがGLAYの「ウィンターアゲイン」ですね。
あれU2そのまんまです。
かっこいいですけどね。
ちなみに、このあいだ新聞で見たんですけど、
歌っているボノさんはセントラルパークを自転車で
走っていたところスッ転んで、
腕を骨折して「僕はもうギターを弾けないかもしれない」と
コメントしたそうです。
New Year Songではもうひとつ、
佐野元春の「Young Bloods」を持ってきています。
アナログ盤しかないんですが、
きょうはプレーヤーを持ってきているのに使ってないから
聴いてみましょうか。
いわゆるドーナツ盤です。
New Yearが歌い込まれているのは
「静かな冬のブルースに眠る この街のニューイヤーズ・デイ」という、
ここだけなんですが。聴きましょう。
33回転とか45回転とか、若い人にはわからないですよね。
これは45回転ですが、45回転は回転が速いんです。
回転が速いと何が良いかというと音質が良いんです。
音圧が高くなるというか。
12インチシングルという30センチ盤を
45回転で回すとビート感が上がるんですね。
佐野元春/Young Bloods
国際青年年というのがあって、それのテーマ曲でした。
代々木公園でゲリラ的にライブをして、
それをPVにしてまして、これがなかなかかっこいいんです。
ちなみにドラムはシータカ(古田たかし)さんです。
これを掛けた以上、実は元ネタも用意しておりまして。
もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
この曲は何を隠そう、こちらが元ネタになっているんです。
聴いてみましょう。
The Style Council/Shout to The Top
(場内笑)
The Style Councilの84年の作品です。
この2年後にさきほどの「Young Bloods」が出ました。
好きだからマネしちゃいました的ですが、
マネしても、それなりに良くできていればいいんじゃないかな。
この「Shout to The Top」のドーナツ盤のジャケは
ひどいジャケ写で、シャウトしてますね。
New Year Songはこんなところにしておきます。
New Year Songではないんですが、
正月になると聴きたくなる曲があります。
もしかしたら以前、CMとかで正月に
掛かっていたせいなのか分からないんですけど、
正月になったら聴いてみようかなという気持ちになるのが
Timothy B.Schmitの「So Much in Love」。
なぜだか聴きたくなるんです。たしかミニコンポのCMです。
(編集注:パイオニアのミニコンポ「プライベート」のCM、83年)。
素敵な曲ですよ。
Timothy B.Schmit/So Much in Love
オリジナルは60年代のドゥワップ、The Tymesで、
それをティモシーBシュミットがカバーしたものです。
シュミットさんは「ホテルカリフォルニア」で有名なEaglesのベーシストです。
Eaglesもあとで聴いてみようかと思います。
「So Much in Love」は、そののちに我が敬愛する達郎さんも歌っています。
達郎バージョンもちょっと聴いてみますか。
「ON THE STREET CORNER」というアカペラシリーズの2枚目に入っています。
これは限定10万枚のLPでお高いものです。
そのうちにCD化したので値段は下がりましたが、
出た当時はすごいプレミアが付いていました。
山下達郎/So Much in Love
ライナーノーツを見ると、このアルバムが出たときに宣伝文句で
「山下達郎もびっくりなアカペラコーラス」と書いてあったのを
ご本人が読んで「だったら俺もやろうかな」ということになったと書いてありました。
さらに上を行ってしまおうという達郎の魂胆が丸見えな感じで、
ものすごくバランスの良いコーラスになっていますね。
さっきのティモシーBシュミットに戻ります。
彼がEaglesでリードを取ってヒットした曲があって、
僕も大変好きな曲があるのでご紹介したいと思います。
『The Long Run』というアルバムに入っている、
邦題は「言い出せなくて」。
Eagles/I Can't Tell You Why
たいていのEaglesの曲はドン・ヘンリーがボーカルを取っているので、
こういう甘い声のものは少なくて。
ドン・ヘンリーはドラムを叩きながら歌って、
ティモシーBシュミットはベースを弾きながら歌って、
もう一人グレン・フライというギタリストもボーカルを取るので
メインを取る人がいっぱいいます。
これはドン・ヘンリー。これはティモシーBシュミットというふうに、
それぞれにメインを取ります。
Eaglesつながりでお話しすると、
J.D.サウザーというシンガーソングライターもいます。
彼はEaglesのメンバーではないんですが、
『ハートエイクトゥナイト』や『The Sad Café』で
Eaglesのメンバーと共作しているんです。
だから“第三のEagles”みたいに言われています。
このアルバム『You're Only Lonely』は大ヒットしました。
職人肌で裏方の人なので地味な存在ですが、
好きな人は超好きな感じです。
ヒットしたのは1曲目の「You're Only Lonely」。
昔のロカビリー、ロックンロールをモチーフに、
西海岸のサウンドとミックスしたもので、ものすごくヒットして、
これで彼の名前が一躍世に出ました。
聴いたことあると思いますよ。
J.D.Souther/You're Only Lonely
これは80年代前半ですが、当時でも少し古のサウンドに聴こえていたものです。
聴いて分かるとおり、ものすごく歌が上手いので、
EaglesのコーラスにもJ.D.サウザーの声は結構入っています。
ここに、このレコードたちが横並びに置いてあるのには理由があります。
今聴いたアルバム(『You're Only Lonely』)の
演奏者ほぼそのままのメンバーで作ったアルバムがこちら
(『Dad Loves His Work』)です。
ほぼ同じメンバーで作っていて、
加えてJ.D.サウザーも参加していて、
これまた全米トップ5くらいまで行きました。
これもすごく大好きだったんですが、
LPは持っていてもCDは持っていなくて。
今なら3in1で安いんです。
だからCDも買って改めて聴いてみたら「やっぱ、すげえな」って思いました。
ジェイムス・テイラーとJ.D.サウザーが共作のうえ、
さらにデュエットもしている「Her Town Too」という曲を聴きます。
きょうのハイライトでもある感じです。
James Taylor/Her Town Too
お上手。なんだろう、このハーモニーの取り方がすごいですよね。
主線に対して、こんなハーモニーを取れる人は
あんまりいないんじゃないかな。
81年の作品でした。西海岸ものが続きましたね。
レジメに戻ります。聴いてないのが3曲ありますね。
ひとつ、まさに出たばかりの新譜があります。
出たばかりというより、インポートでもまだ日本では買えません。
でも、どうしても聴きたくて、ドイツのオフィシャルサイトにオーダーして
ECMから送ってもらったんです。
2月10日くらいの発売ですが、ドイツに頼んだら、
なぜか昨年末に来たんです(笑)
それくらい聴きたくてオーダーしちゃったんです。
Anouar Brahemはチュニジアの方です。
皆さんが見たことないようなウードという楽器を弾きます。
ウードはギターのような形をしていて、
似たものではリュードという楽器があります。
ウードとリュードの違いは何かというと、
リュードにはギターと同じようなフレットがあります。そこを押さえると音が出ます。
ウードはフレットがないんです。
いわゆるヴァイオリンと同じようなクラシックな形をしていて、
ちょっとした音程をつけるためのフレットがない。
そのウードの奏者です。
なぜ、これを聴きたくなったかというと長くなるんですが。
理由は、変な聞き方なんですが、
いわゆる小編成のバンドとオーケストラの編成の音源をずっと探していて、
その中にフィットしたということなんです。
たとえばピアノとベースがいて、そこにカルテットがついているとか。
ギターとベースがいて、そこにカルテットとか。
サックスがいて、そこにカルテットがついているとか。
そういう音源がどうしても聴きたくて、探して探して、
これに行き当たったんです。
ですので、ウードが聴きたかったというよりも、
この編成が聴きたかったわけです。
ジャケット写真は2011年1月の写真を採用していて、
チュニジアで革命が起こった年の写真だそうです。
いわゆるアラブの春といわれています。
前大統領が失脚して民主政治になったものの、いまだに荒れている状態で、
Brahemさんはチュニジアにはいられなくなり、
この年からヨーロッパに移り、創作活動もしばらくしてなかったんですが、
去年久しぶりにこれを作りました。
去年の8月に録音して11月に出ているので、
ECMにしては珍しく速い。
ECMは2、3年眠らせてリリースすることが多いんですが、
これはなぜか半年経たないうちに出ました。
ちょっとマニアな話になっていますね。
非常に政治的な背景を持って彼が書いているので、
さっきのArvo Partほどではないですけど、
ちょっと重い感じの作品ではあります。
ものすごく、ものすごく、感銘を受けた作品です。
Anouar Brahem/January
こういうのが延々と続きます。二枚組のアルバムで
全曲素晴らしいアレンジになっています。
あまり家でこういうどんよりしたのを聴いていると心配されるので(笑)、
お正月からヘッドフォンをして聴いていました。
まだ新譜です。気になった方は2月に日本でも買えます。
それまでに欲しければドイツに連絡を。
ということで、そろそろ終盤戦で、レジメでいうとあと2曲ありますが、
どうしようかな。Miles Davisを聴いてみましょうか。
毎回イベントのときには、このMiles Davisのポスターを持ってきます。
たいてい、マイルルはなにかしら1曲掛けていますが、
きょうはかなり挑戦的なものにしました。
鋼鉄のボックスに入っている、『Bitches Brew』という
1969年に録音された歴史的名盤。
革新的な作品といわれ、これを境にジャズの世界が
70年代に変わって行ったといわれています。
2枚組のアルバムも出ていますが、
この4枚組も出たので買ってしまいました。
このボックスを買って10年以上経つんですが、
いまだに全部を通しで聴けていないです。
なぜかというと、革新的な部分がいまだに分からないんです。
大絶賛する人が世の中にいっぱいいるんですけど、
僕の中では落としどころがまだ見つからないんです。
でも忘れた頃にまた思い出して聴いたりしています。
初体験の方も多いと思うので、2、3分聴いてみましょう。
曲自体は20分くらいあって、
聴いていると止まらなくなっちゃうので。
Miles Davis/Pharaoh’s Dance
これが延々と20分。20分どころじゃなく、こういう曲が2枚組。
「どうだ、聴け」っていう感じで存在しているわけです。
この4枚組セットはこのレコーディングセッションのすべてを
網羅したということで発売になったんですけど、
全部聴けるのはいつのことやらという感じです。
これがいわゆるマイルスのBitches Brew。機会があったら聴いてみてください。
レジメではあと1曲となりました。Opazです。
「One on One」は92年に発売された12インチシングルです。
その当時、僕は札幌にいて、
東京のレコード屋さんに行きたいと思いつつ、
月に1回の出張でしか行けなくて、
そのたびに買い貯めしていて出合ったものです。
当時はアシッドジャズがものすごく流行っていたのですが、
札幌のレコード屋さんにはなかなかアナログ盤が入ってこなくて、
でもこれがどうしても欲しくて、
出張の仕事を早々に切り上げてレコード屋に漁りに行ってゲットしたんです。
そしたら札幌に帰ったら札幌にもあったんですけど(笑)
なぜこれが欲しいと思ったかといえば、
雑誌のレビューに「クラブのアフターアワーズ
(メインのダンスフロアが終わったあとに掛ける曲)にうってつけ」
と書いてあって、謳い文句が「午前3時の音」で、若かったので
「午前3時って気持ちいいよな」って思って買った作品です。
Opazはプロダクション名でRay Haydenという
白人ヴォーカリスト兼プロデューサーが歌を歌うんですが、
この曲はMica Parisというイギリス人の
黒人の女性ヴォーカリストとデュエットしているんです。
さあ聴いてみましょう。
30センチ盤を45回転で回します。
Opaz/One on One
結構ヘビーローテーションしてたので、
溝がガタガタで割れてましたね。
Opazはそののちメジャーな仕事もしていて、
スイングアウトシスターズをプロデュースしたり、
イギリスではそれなりの仕事をしていました。
今何しているのかは分かりませんが。
いわゆるアシッドジャズの黎明期の楽曲でございました。
とういうことで、そろそろ9時ですね。お決まりの最後。
最後はですね。初めての方にとっては、なんのこっちゃですね。
この回の決まり事で、最後は山下達郎を聴いて
終わることになっているんです、はい。
きょうは途中で「So Much in Love」を聴きましたので、
アカペラとは違うものにします。
これに決めた理由はというと、
昨年末にテレビを見ていると「うわ、またきた」というほど、
よく掛かっていたんです。
これです、「踊ろよ、フィッシュ」。アナログのドーナツ盤です。
観衆:おおおー。
出た当時は全日空沖縄キャンペーンソングでして、
夏の沖縄に行こう的な、
夏っぽい作品をと依頼されて達郎さんが作りました。
年末に掛かっていたのは車のCMでしたが……。
20年くらい前の作品ですが、
改めて聴いたら、本人も若かったのもあって、
ものすごい勢いがあって、良く出来上がっています。
これにはアルバムヴァージョンとシングルヴァージョンがありまして、
テレビで掛かっていたのはシングルヴァージョンなんです。
ふふふ。なぜ分かったかというと歌詞が違うんです。
テレビCMでは、サビの歌詞が
「踊ろよフィッシュ まぶしいキッス 踊ろよBaby」というフレーズでした。
で、シングルを見るとシングルはそうなっています。
いっぽうアルバムを見ると
「踊ろよフィッシュ まぶしいキッス おくれよBaby」なので、
歌詞的に言うと「まぶしいキッスおくれよBaby」とのちのち直したくなって、
アルバムを作るときに達郎さんが変えて歌ったんです。
ですので、アルバムを聴くと「おくれよBaby」で、
シングルを聴くと「踊ろよBaby」と歌っています。
たかだか「おくれよ」と「おどろよ」の二文字だけが
違うところが気になって録り直したという。
加えて、ミックスがちょっと違って、
シングルは派手ぎみですがアルバムは
微妙に地味に落ち着いています。
もうひとつは、アウトロの4分20秒にドラムとベースがミュートされて
コーラスだけが残るパートが2拍くらいあるんですが、
あるのはシングル盤だけなんです。アルバムを聴くと、
そこは通しでリズム隊が入っています。
その3つが違うことを発見しました。
きょうはシングル盤を聴きます。
この音源は幸いなことに「トレジャーズ」というベスト盤に入っているので、
音的に良いほうで聴きたいと思います。
4分20秒のところまで聴きましょうね。
山下達郎/踊ろよ、フィッシュ
わかりましたか、4分20秒のあれ。へへへーーっ。
あれがないのがアルバムヴァージョンです!!
ということで終わります。
ありがとうございました。まだ飲んでもらって大丈夫ですよ。
(拍手)
2015年1月12日
於 ohanaya
選曲、お話 平井康二
by ikanika
| 2015-01-30 23:53
|
Comments(0)
CIP コラム
by cafeikanika
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